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勝間和代さん考

 2月25日(木)放送の「知る楽仕事学のすすめ」(NHK教育)をたまたま見た。久しぶりにこの番組をつけると、勝間和代が藤巻幸夫のインタビューを受けるというスタイルに変わっていた。勝間さんについては、最近の出版物の傾向にいまいちついて行けず、静観気味に眺めていたのだが、この番組を見て、今一度改めて勝間さんという存在について考えたので、記しておきたい。

 勝間さんは、マッキンゼーでがむしゃらに働いて来たが、あるとき仕事の目的を見失い、38歳で退社、独立した。その時、自分の「人生ミッション」を考えたという。自分はこれまでコンサルとして、問題解決を行なって来たし、これからも自分がやりたいのは問題解決だ、そして、この社会の一番の問題は、女性が働き続けられないということだ、と設定した。

 勝間さん自身、子どもが生まれた時に会社からパートになるよう言われたり、コンサル時代には、自分は少ない方だと前提したが、単に女性だということだけで担当を外されたということがあったという。社会のそういう明白なおかしいことを解決しよう、自分の子どもたち(娘さん3人)が成長した時には少しはましな社会にしたいと思ったという。

 そして、ここからがミソなのだが、では、その解決方法として、勝間さんはどのような方法を取るべきだと考えるか。勝間さんは、そうした社会的劣勢の立場に置かれるマイノリティー、社会的弱者の問題は、識者が手を差し伸べて法整備をするということでは解決しない、と語る。そうした弱者の側が立ち上がって、自分で自分の権利を主張し勝ち取っていかなくてはならない。それが、彼女の主張だ。

 そうか!と、ここで膝を打った。つまり、最近の勝間さんの本がやたら顔写真が多く、かつ大衆に迎合したような書名だったりするのは、広い裾野の読者を対象にして、大勢を立ち上がらせようとしているからなのだ。紅白の審査員も、そうした目的に合致するのであろう。だから、こうした彼女の手段については、しばらく見守っていくべきだと思った。むしろ、こうした勝間さんの活動に対して、否定的な見方も少なくない状況においては、積極的に擁護していかなくてはいけない。なぜなら、勝間さんの語っているような内容を、他の誰も、このようにテレビで語ってくれる人などいない。誰が、彼女の言っているように、この社会は子持ちの女性に厳しいとか、男性は働き過ぎだとか、明らかにおかしいけれど誰も言わないことを堂々とテレビで言ってくれるだろうか。彼女がいかに節操なく顔写真を本の表紙に使おうが、そんなことは些末なことなのだ。

 勝間さんの活動は、テレビや出版に限られない。中央大学大学院でMBAのコースも持っている。番組では、その授業風景も映し出した。受講者は主に企業の法務・人事担当の部署に所属する社会人学生だという。そこでのトークの中にこうあった。1)日本では女性にも割と教育費をかけて、高学歴の教育を受けさせるが、それが社会に還元されず、眠っている。2)日本でも企業に聞くと、女性(働く母親)の活用を行なっているという。しかし、それはワーキング・マザー用に用意された「マミー・トラック」と呼ばれる仕事で、全くの対等な職種ではない。自分としては、そうしたマミー・トラックが良いのか、それとも男性と同じ仕事が良いのか、というのは判断が付いていない。学生の皆さんと講義を通じて意見を交換することで、探っていきたい、と。ここでのポイントは、勝間さんすら、母親の働き方についての最善策をまだ知らない、ということだ。ましてや、視聴者である自分が分からなくて模索して当然と言えて、なぜかホッとした。

 番組では、他に、勝間さんが始めた、仕事を持つ母親のための情報サイト「ムギ畑」の話もあった。働く母親は必ず問題に直面する。しかし、どういう困難が持ち上がるかということを前もって知っていれば、パニックにならなくて済む。勝間さんは、0と1とでは随分違うと言う。もちろん困難は1なんかじゃなくて、100なんだけれども、それを全く知らないのと、少し知っているのとでは全然違う。自分としては、自分が経験した事柄について、自分の5歳下、10歳下のワーキング・マザーにも伝えていきたい。なぜなら、彼らも自分と同じ困難に必ずぶつかるはずだから、ということだった。

 そういうことで、以上をまとめると、今回はテレビ番組を通じて、改めて、勝間さんの強い目的意識を感じた。つまり、最近の著作を見るにつけ、とうとう売れる方向に鞍替えして、儲けに走って、ナルシシズムに行っていると思っていたけれど、今回のトーク番組を見て、彼女の根幹というのはそうではなく、やはり社会改革だったのだと思った。とはいえ、彼女が言っていることは当然のことだし、彼女の扱っている問題自体は特に新しいことではない。古くからある問題なのだ。だがしかし、繰り返し言うと、彼女の他にこうした事柄について、堂々とテレビで啓蒙している人はいない。そういう意味で、すごく貴重な存在だし、意義があるのであって、これからもその方向で、どんどん頑張って行って欲しいと思う。

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