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追記:グレイス・ペイリーについて [本]

 グレイス・ペイリーは、「二つの耳、三つの幸運」という文章の中で、自分が小説を書き始めた頃のことを振り返り、このように書いている。
私は当時、最新の小説を読んでいた。五〇年代の小説、男性向きの小説。伝統的なものであれ、アヴァンギャルドなものであれ、あとになってはビート的なものであれ。私自身かつて少年であったものの一人として(『トム・ソーヤ』を読んだ女の子たちの多くは、自分たちが内なる真の少年性を見いだしたことを知っているという意味で)、自分はシリアスで重要な素材について書いていないんではないかという考えに、かなり早い段階で染まっていた。成人した女性として、私には選択肢はなかった。日々の生活、台所の中の生活、子供たちの生活、そういうものが私に与えられていた。それが私の取り分であり、大きな幸運の始まりだったのだが、そのときの私にはそんなことは知るべくもなかった。(村上春樹訳『人生のちょっとした煩い』文藝春秋、収載)

 夜中の2時に目が覚めて、「いったい自分の行く手を阻むものは何か」と思う。その時、この文章が胸に届く。自分もいずれ、ペイリーのように、自らの取り分を生かして、大きな幸運を得られるだろうか。

 改めて、この人には良いものを感じる。1922年生まれとあるが、まだご活躍なのだろうか。と思って検索してみたら、2007年に亡くなっていた。知らなかったので、ちょっとショック。

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