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先進国の「男の子問題」 [本]

 パラパラと『書斎の窓』(有斐閣)のバックナンバーをめくっていたら、2008年11月号に興味深い記事が載っていた(伊藤公雄「書評:柏木恵子・高橋恵子編『日本の男性の心理学-もう1つのジェンダー問題-』(有斐閣、2008)」)。

 最近、先進国では「男の子問題」というものが顕在化している、ということである。

 すなわち、上記記事によれば、OECD(経済開発協力機構)の学力調査では、中等教育レベルでの低学力層には明らかに男の子が目立っている。OECDの2003年データでは、加盟国の同世代の大学型高等教育への進学率は、女性51%に対し男性は41%で、10%も水をあけられている。そして、この大学進学率における女性優位は、経済先進諸国が教育に力を入れるようになった1990年代以後、顕著な傾向として生まれたもので、同じOECDのデータでは、男女平等度と女性の学力の高さはかなりはっきりとした相関があるとされている。つまり、ジェンダー・バイアスが解消された社会では、男の子に分が悪い状況が始まっており、多くの経済先進国では、学力における男女差(つまりは男子の学力低下)がかなり問題にされつつある、ということである。

 これってけっこう面白いと思うが、どうだろうか。前から、「女が出来るようになったら、男はしぼむ」という理屈を巷で耳にすることはあったけれど、本当にそうした相関性による現象が現実に起こっているということに、へぇ~と思った。学力差に影響するであろう家庭環境や教育環境は、個人レベルでの差であって、性別の差ではないようにも思うが、でもこうして歴然とした差が生じているのには、何か理由があるはずだ。なぜ、女が台頭すると男はしぼむのか。どうして、ちょうど同じくらい、ということにならないのか。

 学問的な分析はきっときちんとなされるのだろうけれど、とりあえず思うのは、やっぱり男の子の側に、女には負けられないという心理があって、負けるとやる気が失せてしまう、ということがあるのではないかと思う。前に何かで読んだが、妻の収入が夫の収入の何割か(6割だっけか)を超えると夫の精神的ストレスが高まるんだとか。上に立たねばならないという強迫観念ってあるのかもしれない。男はつらいよ、である。

 とはいえ、うちの子どもはまだ未就学児ゆえ、身近で「男の子問題」を感じることは無い。大学生に接していると、かすかな印象くらい感じたりするのだろうか。いずれにしても、上記記事が付け加える事実として、日本における大学進学率は男性48%に対して女性33%ということであるからして、日本ではまだまだ「女の子問題」が先なのである。

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